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真下一策の「忙中閑話」

動体視力(1)

2006-03-03

動くものを見る時の視力を「動体視力」と呼ぶ。

この動体視力には2種類ある。「KVA動体視力」は遠方から真っ直ぐ自分の方に近づいて来るものを見る時の動体視力である。たとえば、車の運転をしている時に前から近づく道路標識を見るのに必要な視力で、遠くで見えるほどよい視力である。また「DVA動体視力」は、目の前を横に動くものを見る時の動体視力で、卓球を横から見る時を思い浮かべていただくとわかりやすい。早い動きが見えるほどよい視力である。このDVA動体視力を測定する時は、目の前のスクリーン上を右から左、あるいは左から右に速く移動する視標を見て検査するが、日本人は左から右に動くものを見る時の方が、逆の方向より検査成績がいい。

いつも左から右に文字を読んでいるためと思われるが、逆の方向の文字を使うアラビア人の検査成績と比較したことがないので断言はできない。

我々の研究仲間に、広島大学の眼科の先生がいる。その先生が、上から下と、下から上の両方向のDVA動体視力を検査した。日本人とアメリカ人、色々な種目のスポーツ選手を測定したところ、上から下の動体視力は日本人の方が外国人より優秀で、下から上に動くものを見るのはバレーボール選手が得意であったという。いつも縦書きの文字を読んだり、ボールを目で追ったりしているのが影響しているのだろうと説明する。

目玉には6つの筋肉がついているが、この筋肉による目の動きがDVA動体視力の能力に関係している。

色々な方向を見る目の動きの中で、左右の動きはこのうちの二つの筋肉の働きによるが、上下の方向に目を動かす時には四つの筋肉が協調して働いている。目を上下に動かすメカニズムは横方向に比べて複雑なのである。野球で、左右の変化球より上下に変化する球の方が目で追いにくいのは、この複雑なメカニズムが影響しているせいかもしれない。

さて、日本人のほうが上から下のDVA動体視力が良いとすると、大リーガーよりも日本人の方が、縦に変化するフォークボールを打つのが上手である可能性が高い。フォークボールを決め球とする投手が、日本よりアメリカで成功する理由は、案外こんな所にあるのかもしれない。
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