序にかえて

私は本来外科医であるが、早くからスポーツとのかかわりが深い。外科医になって4年目、大学医局から東洋工業株式会社(現マツダ)の付属病院に出向を命ぜられた。着任すると「ここの外科医はわがサッカーチームのチームドクターを勤めることになっている」と言われた。当時チームには、メキシコオリンピックでメダルをとったメンバ−が何人もいて、全日本チームの多くは東洋工業出身と言われるほど勢いがあった。

ともあれ、こうして私はチームドクターとなったが、これが私がスポーツ医学に進むきっかけである。そして後年、第一期のスポーツドクター称号の取得となって、日本バスケットボール協会の医事委員になったりした。またプロ野球にも関係を生じ、特に広島カープのチームドクターになったりした。これらの間の色々な感想は、本書の(当コラムは真下先生の自主出版「忙中閑話」より転載)第二項「スポーツドクター」、第三項の「目の話」の記事となっている。

こうして若い選手たちを見ていて、ふと気づいたのは「熱心に練習しても上手にならない選手がいる一方で、ふだんあまり練習しなくても、試合では素晴らしい動きをする選手がいる」ことである。この疑問の解明は、10年ほどの後、東京メガネ(株)におけるいわゆる「スポーツビジョン」の研究によって行われ、カープ球団やその他スポーツ団体のご好意による実験などで確かめられた。現在私どもの採っている実験テーマは次の8つである。

1)静止視力
2)動体視力KVA
3)動体視力DVA
4)コントラスト感度
5)眼球運動
6)深視力
7)瞬間視力
8)目と手の供応動作

現在、この学説や運動を支援してくださる先生方は、愛知工大の石垣尚男教授をはじめたくさんいらっしゃる。私どもは年に1回以上研究会を開くほか、私自身も各地の大学や県医師会に招かれて、その普及や宣伝に努めている。これに関する感想は本書第一項の「スポーツビジョン」に載せてある。なお「スポーツビジョン」について私関係では次の書がある。

◎スポーツビジョン(ブックハウスHD)共著
◎バスケットボール・・・もっと安全にもっと強く・・・(ブックハウスHD)共著
◎スポーツビジョン トレーニング(ナツメ社)監修
◎スポーツビジョン(ナップ)共著
◎スポーツ外傷害(医歯薬)共著
◎スポーツ眼科学(ナップ)共訳

また私が東洋工業株式会社付属病院に出向した時に、社内に「アンタレス」というヨットクラブがあったので、それに参加させてもらい、32フィートのクルーザーでレースやクリージングを楽しんだが、やがて国の「一級船舶免許」を得るまでになった。その後、ヨットを通じて知り合った人々も、広島の舛井寛一氏、三重の藤田恭純氏その他多くの人達で、そのおかげでグアム島やミクロネシヤ、赤道を越えてソロモン群島、そしてオーストラリアまで航海することができた。その時の思いでが本書第四項の「船の話」第五項の「南の島」である。

これら五項にわたる記録の多くは、本務である千葉市の井上記念病院の外科医長の職務を務める多忙な毎日の中で書きとめた閑話といえよう。現在までに相当数になったので、このたびその中から50篇を選んで「忙中閑話」と名付けて、大方のご叱正ご批判を頂戴しようと考えた次第である。


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