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ローカーボそれともローファット?:2)脂肪食の問題点 |
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前回、低糖質ダイエット(アトキンスダイエット)の効果についてお話しし、「短期間で脂肪を落とすには低糖質、長期間で脂肪を落とすには低脂質」と結論づけました。低糖質ダイエットは、カロリー過剰となるほど脂肪を摂取してもよいというものではありませんが、総エネルギー摂取量のうち約50%が脂肪ですので、相対的には高脂肪ダイエットといえるでしょう。またこのダイエットは、あえて脂肪摂取を控えないことにより脂質代謝能力を改善するという点に特徴があります。そこで今回は、「脂肪の摂り方」の方に着目してみましょう。
【高脂肪食が脂肪細胞に及ぼす効果】
以前の本コラム(2002年10月号)でお話ししましたが、脂肪が小腸で消化・吸収されると、十二指腸から「消化管抑制ペプチド」(GIP)というホルモンが分泌されます。このホルモンは、胃酸の分泌や蠕動運動を抑制し、消化活動を減速して余剰のエネルギー摂取を抑えます。脂肪食の「腹持ち」がよいのはこのためです。一方、GIPはさまざまな組織にはたらき、リポタンパクリパーゼ(LPL)という酵素の活性を高めます。この酵素は、血液中の中性脂肪(リポタンパク)を脂肪酸とグリセロールに分解し、細胞が取り込めるようにします。したがって、各組織での脂質代謝を改善する効果をもつといえます。ところが、脂肪細胞もGIPの作用によって同様に血中の中性脂肪を吸収し、太ってしまいます。実際、遺伝子操作によって作ったGIPのないマウスは、高脂肪食でも太らないことが報告されています。脂肪を制限しないダイエットでは、おそらくこのGIP活性が徐々に上昇するため、長期的にみるとダイエット効果が低下してくるものと考えられます。
【高脂肪食が頭のはたらきを悪くする?】
最近、動物実験から、高脂肪食によって頭が悪くなる可能性のあることが示されました。Granholm(2004)、Morleyら(2004)はそれぞれラットとマウスに、通常の餌と、カロリーが同じで脂肪の割合の高い餌を与え、迷路学習の効果を比べました。その結果、高脂肪食を与えられた場合、ラットでもマウスでも学習効果が低下しました(記憶力が悪くなった)。そのメカニズムは不明ですが、脂肪摂取量そのものより、摂取した脂肪の「質」に問題がある可能性があります。
【植物性脂質でも安心できない】
従来、「動物性脂肪は体に悪く、植物性脂肪は体によい」といわれます。事実、動物性脂肪を過剰に摂取すると、血中の中性脂肪が増え、動脈硬化や心筋梗塞の原因となります。中性脂肪には、動脈硬化を促進する「低密度リポタンパク」(LDL)と、逆にこれを抑制する「高密度リポタンパク」(HDL)があり、動物性脂質がLDLとHDLの両方を増やすのに対して、植物性脂質はHDLの方をより増やすとされています。しかし、植物性だからといって安心はできません。元来植物性であった脂質の中にも、「トランス脂質」という脂質を含むものがあり、これがもっぱらLDLを増加させることがわかりました。
【シス脂質とトランス脂質】
脂肪(脂質)は脂肪酸とグリセロールからできています。脂肪酸には、炭素と炭素の間に「二重結合」という結合がなく、安定した構造をもつ「飽和脂肪酸」と、二重結合があり不安定な構造の「不飽和脂肪酸」があります。飽和脂肪酸をもつ脂質は、全体として分子の鎖がまっすぐで、互いの方向が揃いやすいために、常温では密にパックされやすく固体になります。動物性脂肪は主にこちらです。一方、不飽和脂肪酸をもつ脂質は、分子の鎖が途中で折れ曲がっているために方向が揃わず、常温でも液体です。植物性脂質は主にこちらです。ところが、人間は植物性脂質の二重結合を自在に飽和結合に変え(還元する)、常温でやや固いマーガリンにしたり、「日持ちのよい油」にしたりします。しかし、この加工過程で、一旦飽和結合になったものが、前とは違った形で再び二重結合に戻ることがあります。本来の二重結合は、脂肪酸の分子を折り曲げるようにできていて、これを「シス型結合」といいます。これが、分子をまっすぐな形に維持するような「トランス型結合」に変わってしまう場合があり、こうしてできた脂質をトランス脂質と呼びます。
【トランス脂質が細胞機能を損なう】
トランス脂質は加工の工程で意図せず出来てしまう不飽和脂質です。問題は、このような脂質が天然には少ないという点にあります。細胞膜を構成するリン脂質は一般に、1本の飽和脂肪酸の鎖と1本の不飽和脂肪酸(シス型)の鎖をもちます。このおかげで、細胞膜は適度の固さと、液体としての性質(「流動性」)を併せつことができます。したがって、シス型の代わりにトランス型の不飽和脂肪酸が入ってくると、膜の流動性が低下し、細胞の機能が損なわれてしまいます。ガンの原因になるという指摘もあり、欧米ではこのトランス脂質が大きな問題になりつつあります。上述の高脂肪食による学習効果の低下は、餌中のトランス脂質によって神経細胞の機能が低下したことも一因ではないかと考えられます。今回の結論として、長期的な高脂肪摂取は控えることと、加工をしていない脂肪の摂取を心がけることが、ダイエットのためにも健康のためにも重要といえるでしょう。
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