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ローカーボそれともローファット?:1)低糖質ダイエットの効果 |
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年中行事のように、「夏に向けてのダイエット特集」の取材が来る季節になりました。これまで長い間、減量のための食事法として、「糖質(炭水化物)を減らすべきか脂質を減らすべきか」という問題が議論されてきました。特にここ1、2年の間、「アトキンスダイエット」の提唱者である R. Atkins博士が肥満による心筋梗塞で亡くなったとのニュースが流れたこともあり(肥満が死亡要因ではなく、入院中に肥満してしまったというのが真相のようです)、この問題をめぐる議論が再燃しているようです。そこで今回と次回にわたり、低糖質ダイエットと低脂質ダイエットについて、それぞれの効果や問題点などについて考えてみることにしましょう。
【ダイエットとエネルギー収支】
まず、肥満と減量について、エネルギー論的に考えてみます。物理学の基本法則に「エネルギーは形を変えても消滅はしない」(エネルギー保存則)というものがあります。これに則れば、体脂肪の蓄積はあくまでもエネルギー摂取がエネルギー消費を上回っていることが原因であり、減量するためにはこの関係を逆にすればよいということになります。当然、生理学的にもこれは真実です。栄養学の分野でも、まず基本として摂取カロリーと消費カロリーのバランスを正すことが重要とされているはずです。この場合、摂取する食品が糖質(4 kcal/g)であろうが脂質(9 kcal/g)であろうが、カロリーという数字にすれば全く違いはありません。
【アトキンスダイエットとは】
一方、総摂取エネルギーよりも栄養素の量的バランスが重要であるとする考えもあり、その代表が「アトキンスダイエット」といえます。これは、故R. Atkins 博士が「アトキンス博士のダイエット革命」(1972)、「アトキンス博士の新ダイエット革命」(1999)で紹介した方法です。その基本戦略は「総エネルギー摂取量を考慮するのではなく、選択的に糖質の摂取を減らす」ことにあるといえるでしょう(基本的比率例、糖質:タンパク質:脂質=2:3:5)。原理的には、「代謝されやすい糖質を制限し、代謝されにくい脂質を制限しないことが、最終的に脂質代謝を高めることにつながり、体脂肪を減らす」とされています。また、「糖質を摂取することが、余剰の糖質からの体脂肪の合成を助長する」としている点は、「低インスリンダイエット」と一脈通ずるところがあります。
【タンパク質のエネルギー獲得効率】
アトキンスダイエットは、数万を超える臨床経験にもとづくものとされていますが、前術のようなエネルギー論的考えに立った批判も多く、議論の的になってきました。ところが昨年、Feinmanらは、糖質とタンパク質を比較した場合、タンパク質では摂取したエネルギーのうちより多くが熱になってしまう、すなわちエネルギー獲得効率が悪いことを示しました。このことは、同じ総エネルギー摂取量でも、低糖質、高タンパク食の方が高いダイエット効果をもつことを示唆しています。実際、Mikkelsenらは12名の男性を対象に、身体のエネルギー消費量を正確に測る実験を行い、同じカロリー摂取量でも、高タンパクダイエットの場合には平均約4%エネルギー消費が高くなると報告しています。高々4%ですが、1日当たり100 kcal程度に相当しますので、無視できない数字でしょう。
【アトキンスダイエットは効果があった】
アトキンスダイエットのような低糖質ダイエットが本当に効果的かという研究も相当数行われてきています。その中で信頼性の高いものとして、Samahaら(2003)、Fosterら(2003)が、最も権威のある医学誌モNew England Journal of Medicineモに報告した研究が挙げられるでしょう。これらの研究では、低糖質、高タンパクダイエットと、同カロリーでの低脂質ダイエットの効果を比べ、前者の方が6ヶ月で約2倍の体脂肪減量効果があったとしています。しかし、期間を1年間に延長すると、最終的に両者の間に差がなくなることも報告されています。
【指摘される問題点】
一方、何らかのデメリットはないのでしょうか。一般に、特定の生理学的効果の高いダイエットやトレーニング法ほど、長所の裏返しとしての短所を必然的にもつといえます。指摘されている点をいくつか挙げると、昼間に眠気を誘発しやすい、痛風のリスクを高める可能性がある、「機嫌が悪くなる」などです。3番目については、糖質の低下が、心理的ムードを良くする脳内物質、セロトニンの分泌を下げるためと考えられています(女性はセロトニンの分泌が少なく、機嫌を保つのに甘いものが必要のようです)。一般に、脳は糖質を主要なエネルギー源としていますので、度の低糖質には注意する必要があるでしょう。しかし、糖質の制限が一定の範囲内であれば、長期的に見て憂慮すべき副作用はないというのが、米国生理学会の見解になっています。一方、最近になって食品に含まれる「トランス脂質」が健康に重大な影響を及ぼすことがわかってきました。この点については次回に詳しくお話ししますが、やはり脂質を制限することも重要となるでしょう。これまでの情報から総合的に判断すると、「短期的には低糖質」、「長期的には低脂質」がよいと解釈しておくのが妥当と思われます。
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